現役看護師が解説する看護師国家試験 ⑧抗精神病薬について
こんにちは、毎日死に物狂いで仕事をしているNever give up nurseです。
今回は現役看護師である僕が仕事をしていると何でそうなるのか、原因は何か考えることが多くその経験から様々なことを学んだので、その学んだことを生かして看護師国家試験の問題について解説したいと思います。
今回のことが少しでも皆様のお役に立てればと思います。
問題8.向精神薬と副作用(有害事象)の組み合わせで正しいのはどれか。
①抗うつ薬 ー 多毛
②抗認知症薬 ー 依存症
答え.④
□解説
向精神薬は「中枢神経系に作用し精神活動に何かしらの景況を与える薬剤の総称」です。その中に、抗精神病薬や抗うつ薬、抗認知症薬、抗不安薬などがあります。
①抗うつ薬の副作用は、古いタイプと新しいタイプ(SSRI)があります。
古いタイプでは抗コリン作用(副交感神経が上手く働かなくなること)により口喝や便秘などがあります。
新しいタイプでは抗コリン作用は少なくなる代わりにセロトン症候群(不安や混乱、錐体外路症状(※1)、発熱や発汗など自律神経症状)が起こることがあります。
●多毛はステロイドの症状です。
②抗認知症薬の副作用として消化器症状があります。
③抗てんかん薬の副作用として脳の神経細胞における興奮を抑制するため眠気やふらつき、めまい、頭痛があります。→ 転倒・転落に注意が必要です。
●急性ジストニアは錐体外路症状(※1)の1つで抗精神病薬の副作用です。
④抗精神病薬には抗うつ薬と同じく古いタイプ(定型抗精神病薬)と新しいタイプ(非定型抗精神病薬)があります。
定型抗精神病薬はドーパミン受容体を占領して脳内のドーパミンの活動を抑える働きがあります。この働きはとても強く統合失調症の陽性症状(妄想、幻覚、思考障害など)によく効きます。
しかし、ドーパミンを抑制する力が強いため、錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用があります。
※1錐体外路症状とはパーキンソン症状群(無動、安静時振戦、筋強剛など)やアカシジア(じっとしていられない)、ジストニア(異常な筋緊張により奇妙な姿勢になる)などがあり、ドーパミンは活動を意欲的にしたり、運動の調節を行っているため、ドーパミンが阻害されると運動が上手く行えなくなるため錐体外路症状が起きます。
高プロラクチン血症はプロラクチンの分泌が多くなっていて、女性では生理不順、乳汁分泌、骨粗鬆症などがあり、男性では勃起症状、射精障害、性欲の減退などがあります。ドーパミンが分泌されているとプロラクチンの分泌は抑えられいますが、ドーパミンが阻害されると、プロラクチンの分泌が多くなり高プロラクチン血症になります。
非定型抗精神病薬はドーパミン受容体を選択して阻害したり、セロトニン受容体も選択して阻害するため錐体外路症状などの副作用は少ないです。
しかし、食欲が亢進したりインスリンの分泌が抑えられるため体重増加や高血糖(耐糖能異常)などの副作用があります。(原因ははっきりとしてはいません、あくまで仮設です)
■補足
向精神薬は精神科だけでなく一般病院でも使用されています。
●精神病症状(幻覚、妄想など)、暴力行為、易怒性 → 抗精神病薬
●易怒性、暴力行為 → 抗てんかん薬
●不安症状、不穏、焦燥 → 抗不安薬
しかし、一般病院ではあくまで一時的に症状を抑えるために使用することが多く、精神科では継続して症状を安定させるために使用しています。
抗精神病薬は統合失調症に使用することが多く、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬を使用しています。
定型と比べて非定型は副作用が少ないですが精神科で15~30年ほど入院している方は定型抗精神病薬を内服していることが多く、錐体外路症状に注意が必要です。
また、定型抗精神病薬は抗コリン作用が強く口喝や便秘になることが多いため、水分摂取状況や排泄状況を観察し水中毒やイレウスに注意が必要です。
実際、以前精神科で働いていた際は、便秘がひどく4~5種類の下剤を内服してたり、1時間の間で体重が5㎏増えていたりしていたため、口喝と便秘には特に注意が必要です。
非定型抗精神病薬は高血糖に注意しなければならないため、既往に糖尿病があるのか、血糖チェックはしているかなどに注意が必要です。